秋田のヤートセは、遠く四国に位置する高知県の伝統的な踊り、”よさこい踊り”がもとになって生まれたものです。
今から30年ほど前、高知県を旅行で訪れた秋田出身の大学生がよさこい踊りを見て感銘を受け、よさこい踊りのノウハウを持って帰り、秋田県の民謡や地域の文化と組み合わせてできたものです。
踊りで秋田を盛り上げようと、1998年には「第一回秋田ヤートセ祭り」が地元の若者主催で開催され、コロナ禍で開催が途切れていましたが、今年は約4年ぶり26回目のヤートセ秋田祭りが盛大に開催されました。
今回取材した秋田まるまる愛好会は主にコミュニティセンター、市役所センタースで活動しているヤートセチームです。
ヤートセ秋田祭りの会場でメンバーの方に、ヤートセについて、まるまる愛好会についてお話を伺いました。
秋田まるまる愛好会は2012年1月、富川ありのぶさん、かおるさん兄妹によって発足したヤートセチームです。
”まるまる”という言葉には、地元秋田を”まるごと”愛する、老若男女様々な人との”交流の輪”を大切にする、どんな些細なことでも良いなと思ったことを”〇”で肯定するという想いが込められています。
チーム名の通り、個性豊かなメンバーが秋田県内各地から集まり、それぞれの特技を生かして活躍しています。
昨年チームの10周年を記念して作られたオリジナル曲”まるまるパーティー”や、”秋田ハタハタロック&サンバ”など、見ている人も思わず踊りだしたくなるような明るくPOPな曲調が特徴で、
明るい笑顔に元気のもらえるパフォーマンスは多くの人に愛されています。
まるまる愛好会は、もともと他団体に所属していた私と妹が独立する形で、ペアで始めたチームですが、
設立当初から今に至るまで、様々な人と出会い支えられてきました。
昨年のヤートセ祭りでは、一緒に秋田を盛り上げようと、秋田を拠点に活動するパフォーマーの方とコラボし、会場を盛り上げました。
また落語家さんに、”あおり”と呼ばれる語り手を務めて頂いたこともあります。そのときの経験から、自分でもあおりをやるときに、漫談の要素を取り入れています。
私と妹で作った振付に、今まで関わってきた人々のエッセンスが加わって、唯一無二のまるまる愛好会のパフォーマンスが生まれるのです。
今後も、老若男女、プロアマ問わず様々な人とヤートセを楽しんで、秋田を盛り上げていきたいなと思います。
まいさん
高校時代に伝統舞踊をやっていたこともあって、もともと踊りに興味がありました。
ヤートセのことを知ったのは、高校の文化祭にゲストで来ていた”チームわげもん”さんの演技を見てからです。そのときに見たパフォーマンスがとてもかっこよくて、いつかヤートセをやりたいと思うようになりました
高校卒業を機に妹と一緒にまるまる愛好会に所属し踊り子として活動しています。
ヤートセはチームによって個性があり、以前はカポエラというブラジルの楽器を使ったパフォーマンスや、地域の太鼓を使ったものを見たこともあります。
初めてヤートセを見る人でもユニークな演技を楽しめること間違いありません。
秋田ヤートセ祭りは年々盛り上がりを増し、6月の風物詩になりつつあります。是非たくさんの人に足を運んでほしいです。
のぞみさん
小学生のころからダンス部に所属していたり、踊るのが小さいころから大好きでした。
以前秋田市のヤートセチーム”笑泉百景(しょうせんひゃっけい)”さんの演技を見てから、ヤートセの踊り子にあこがれるようになりました。
”まるまるパーティー”の中で好きな振り付けは、後ろを振り返って腕をぐるぐる回す部分です。リズムに乗って楽しく踊れます。
ヤートセは各地でイベントをやっていていろんな人と関われてうれしいです。
うささん
前のチームをやめてから、4年ほどまったく踊りはしていなかったのですが、元チームメイト(こうたさん)がまるまる愛好会で踊っているのを見て、また自分も踊りたくなりました。
まるまる愛好会の練習の雰囲気は、和気あいあいとしていてみんなで楽しもうということをモットーに活動しているので、忙しくて参加できないことがあっても負担に思うことなく続けられます。
気楽に活動しながらも、わからないところがあるとしっかり丁寧に教えてくれるので、踊りの技術もきちんと身につきます。
普段は仕事が終わった後に中仙から通っているのですが、自然と、疲れていても「練習に行こう!」という気持ちになります。
皆で踊りを楽しむ場が、自分にエネルギーを与えてくれるからです。
パフォーマンスをするときは、自分が楽しむことはもちろん、見に来てくれたお客さんを笑顔にしたい!という気持ちで踊っています。
あいさん
まるまる愛好会に入ったのは、2017年にかだれ会が主催した100人でよさこいを踊るプロジェクトで代表のとみありさんに出会ったのがきっかけです。
私は踊るのがもともと大好きで、いろいろなチームにいました。
まるまる愛好会の練習は基本ふわふわした感じだけど、ダンスの基礎から練習することもあったり、皆楽しみながら真剣に取り組んでいます。
うささんと同じように、ヤートセのパフォーマンスのときは、お客さんに楽しんでほしい、笑顔になってほしいということを一番に考えています!
こうたさん
出身は大曲の中仙という地区で、昔からドンパン踊りをやっていました。
ヤートセと出会ったのは数年前で、本当に偶然でした。
当時秋田市に住んでいて、たまたまこのあたり(大町周辺)を車で通りかかったんですね。
そしたら、楽しげな音楽が聞こえてきて、何だろうと思って行ってみると、人がたくさんいてそのなかできれいな衣装を着て、かっこよく踊っている人たちがいました。
「こんなのがあるのか!!」と感心し、もう次の年には踊り子としてヤートセ秋田祭りに参加していました。
ヤートセはチームを超えた交流も盛んで、自分も他のチームに混ざって演技をしたりすることもあります。
秋田は「何もない」なんてよく言われちゃいますけど、知られていないだけでこんな風に人々が集まって和気あいあいと盛り上がる場があるんです。
私が偶然ヤートセの音楽を耳にしたように、実際その土地に来てみないとわからない魅力がたくさんあります。
私一人の力は微力かもしれませんが、自分なりに秋田のいいところを発信していきたいですね。
みさきさん
学生時代、岩手にいたときからよさこいを始めました。
そのときから、とみありさん・かおるさんが振付した”イヤサカ秋田”や”ハタハタロック&サンバ”を練習していて、面白い曲だなと思っていました。
あるとき、盛岡で行われたよさこいイベントでまるまる愛好会と出会い、「この方たちがあの踊りを作ったんだ!」と知って、いつか秋田に帰ったらこのチームに入ると決めました。
ヤートセの魅力は、踊っている間は日常を忘れて夢中になれることです。
踊るのが大好きだという気持ちを前面に出し、体を大きく使って踊ることを意識しています。
演技中は表情も豊かになり、普段とは違う自分になれます。
かおるさん
秋田ヤートセの一番の魅力は、踊り子と観客の距離が近いことだと思います。
ありがたいことに県外でもたくさん踊る機会があるのですが、やっぱり秋田の人たちはパフォーマンス中に声を出して応援してくれるんですね。それがとても嬉しい。
振付の中にも、お客さんとのコミュニケーションを意識したパートがたくさんあります。
例えば、みんなで盛り上がれる”まるまるパーティー”という曲では、踊り子が「まるまる!」と腕で丸を作るのにつづいて、観客の人も「まるまる!」と丸を作って返すパートがあります。
コール&レスポンスが成り立ったらそれに対して「いいね!」「もっともっと」などさらに声を掛けます。
踊り子だけでなく、見ている人も巻き込んで会場全体で盛り上がれるのが秋田まるまる愛好会のウリです。
パフォーマンスにストーリー性があるのも、秋田ヤートセの特徴です。
他のチームの振り付けを作ることも多々あるのですが、いかにそのチームのメッセージを表現するかを常に試行錯誤しています。
踊りに想いを載せ、全身全霊で観客の心に届ける。お客さんがいてこそ意味を成すものだと思っています。
コロナ禍の4年間、なかなか外で踊りを披露することはできませんでしたが、希望を捨てずに地道に練習を続けてきました。
今年いよいよ秋田ヤートセ祭りが完全復活して、皆さんと楽しい時間を共有できて嬉しいです。
秋田県は若者も減っていって寂しいなと思うこともありますけど、ヤートセをやっていると、ご高齢の方でも元気に楽しんでいる方が多くいらっしゃってパワーを感じます。
また、我々が振付をした”イヤサカ秋田”という曲も、全国各地でよさこいをやっている若者が踊ってくれていて、若い世代がこうして地元を盛り上げようとしてくれているのを見ると元気をもらえます。
世知辛い世の中ですが(笑)、何か楽しいことないかな、誰かと楽しい時間を共有したいなという方は是非一緒にヤートセを踊りましょう!
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